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活動方針

さらに新しい段階を迎えた地域研究コンソーシアム
――2012年度~2012年度活動方針・計画

運営委員長 宮原曉(大阪大学グローバルコラボレーションセンター)

 2004年の設立から8年が経過し、地域研究コンソーシアム(JCAS)は、90を超える加盟組織がそれぞれの特色を生かしながら相互の連携を深め、地域研究の新たな方向性を創造する段階にはいりました。
 設立時からの加盟組織のみなさんは、現在のJCASの活動メニューをぜひもう一度ご覧いただきたいと思います。地域研究の裾野を広げ、また新たなタイプの連携を生み出す試みがそこにあることを発見されることでしょう。
 これらの活動は、地域研究に携わる加盟組織が、手間ひとつを持ち寄ることで、地域研究の新たな沃野を開拓することを趣旨としています。JCASの加盟組織が実施する事業のなかには、個々の加盟組織が自前で行った方がよいものもあるでしょう。しかし、少々手間はかかるものの、JCAS加盟組織と連携しながら実施することで、地域研究の可能性と伏線が見えてくるものもあります。また、研究の水準や社会への貢献度が伝わりやすくなり、地域研究に対する社会的な認知度が高まることで、加盟組織における研究や教育・実践がよりやりやすくなるということもあるでしょう。
 どこにどのような一手間を加えるかは、まったく自由です。JCASが公募する様々な事業に応募することはもちろんですが、JCASの枠組みを利用して、次世代研究者の育成や共同研究の提案、社会連携事業への貢献を行うことができます。また、JCASが行うべき先駆的な地域研究に関わる事業として、加盟組織のみなさんからさらに斬新な提案がなされることを歓迎します。
 現在、JCASでは、10の幹事組織を基盤として、理事会、運営委員会、事務局が組織され、日常的な活動は運営委員会に置かれた10の部会と1つのワーキング・グループおよび事務局が相互に連携しつつおこなっています。その活動の主なものは、加盟組織が一堂に会する年次集会および一般公開シンポジウムをはじめ、加盟組織間の研究交流の促進、市民社会への貢献、次世代育成、情報資源の共有化、地域研究の新たな方法論の模索、地域研究関連情報の共有と発信など多岐にわたっています。その成果は、和文学術雑誌『地域研究』や報告書『JCAS Collaboration Series』として刊行されたり、ウェブサイト、メールマガジン、ニューズレターを通して発信されたりしています。また、JCASでは、地域研究に関する研究成果や優れた企画、社会的実践を地域研究コンソーシアム賞(JCAS賞)として表彰しています。
 2012年度からは、将来構想ワーキンググループを設置し、地域研究とキャリア教育を主たるテーマに、変容する社会において地域研究が持ち得る社会的インパクトについて検討を始めました。
 JCASの運営は、これまで運営に携わった多くの人たちの試行錯誤の積み重ねによって整備されてきました。そのなかで次の5つの分野が、とくに重点を置いて活動する分野として設定されてきました。今期の運営委員会においても、以下の活動方針と計画に沿って、これら5つの分野に重点を置いた活動を発展させていきたいと考えています。

1.地域研究を設計する―素材や資源の多角的活用
 2.学問分野の枠を越える―共同研究の推進
 3.ネットワークを広げる―学界における地域研究のプロモート
 4.市民社会とつながる―地球規模の課題に関する成果の還元
 5.情報基盤を築く―活動内容や成果をさまざまな形に「翻訳」して広く発信

1.地域研究の設計

 地域研究は、対象、分野、手法が異なるさまざまな学問分野の融合によって新たな知を生み出す学問分野です。JCASでは、加盟組織の多様性を活かし、研究者・実務者等、異なった立場にある人たちがゆるやかに連携することで地域研究の将来像を展望します。
 JCASにおける地域研究の設計は、情報資源部会、地域研究方法論部会、将来構想ワーキンググループの2つの部会と1つのワーキンググループでおこないます。
 情報資源部会では、大学や研究所等の機関に所蔵されている地域研究に関連する素材や資源を多角的に活かす方向性を探り、情報資源の共有化を通じて新しい地域研究の手法を切り拓くため研究をおこないます。情報資源の共有化から研究への応用までの過程を一連の流れとしてとらえ、図書や統計・地図資料の相互利用、フィールドノートの共有化、研究者によるデータベースの公開支援サービスの開発などを通して、「地域の知」へのアプローチを試みます。
 地域研究方法論部会は、前年度まで研究会として活動をおこなってきましたが、今年度からは、部会として地域研究における多様な方法論の止揚をめざします。地域研究には多様な分野や方法を身に付けた研究者が集まっており、地域研究として明示的に確立された方法論があるわけではありません。地域研究方法論部会では、JCASに加盟する研究・教育機関において地域研究がどのように理解されているかを「巡回研究会」を通じて知るとともに、様々な実験的な取り組みをおこない、「文理融合」「社会連携」「ヨーロッパの地域研究」「地域情報学」などの角度から地域研究の方法を提示します。
 将来構想ワーキンググループでは、地域研究を通してJCASが育成するジェネラリストとエキスパートのあり方について、また研究者の日本社会へのコミットメントと社会人教育について、検討をおこなっています。

2.共同研究の推進

  「地域」という枠組みを通して現象を理解する地域研究では、科学的普遍性とは少し異なる次元の、いわばメゾレベルの知のあり方を探求するため、さまざまな学問分野の協働を必要としています。このため、JCASでは、学問分野の枠を越えた共同研究を推進するいくつかのスキームを用意しています。
 JCASでは、加盟組織が一堂に会して交流する機会として、毎年11月第1週に
年次集会を開催し、あわせて一般公開シンポジウムを実施しています。今年度は、「地域研究と自然科学の協働―広域アジアの地域研究を例に」がシンポジウムのテーマです。また、年次集会の前後の期間を「コンソーシアム・ウィーク」として、全国各地で関連シンポジウムを行っています。
 この他、地域研究に関連する緊急性の高い課題について、JCASが主催し、JCASのネットワークを活用して多様な研究者や実務者が参集する「地域の知」シンポジウムを開催します。
 JCASでは、公募による共同研究促進のスキームとして、大学院博士課程在籍者から助教までの研究者を次世代研究者と位置付け、公募により次世代研究者のイニシアティブによる研究企画を支援する「次世代支援プログラム」をおこなっています。採択された企画は地域研究次世代ワークショップとして実施されます。このほか、加盟組織の枠を越えた研究交流促進プログラムとして、「共同企画研究」「共同企画講義」「オンデマンドセミナー」「学会連携」の各公募プログラムを通じて共同研究を促進しています。

3.学界との連携

  JCASの活動は、広く学界における地域研究の発展と、これによる学術的貢献を目標の一つとしています。このためJCASでは、日本学術会議や地域研究連絡協議会、さらに地域研究に関わるさまざまな学会との連携を活動の根幹にすえています。
 今日、地域研究への潜在的なニーズは多方面に拡大しており、多様なバックグラウンドを持つ人たちが研究活動をささえるようになってきています。これに伴い、学術研究における大学の位置付けが変化しつつあるとともに、自由な学術討論の場である学会の重要性がいっそう高まっています。JCASでは、加盟する学会との連携・協力を促進するため、学会連携プログラムを用意しています。このプログラムでは、学会と学会、あるいは学会とそれ以外の組織が共同で企画実施する研究企画を公募し、JCASを通した学会どうしのネットワークを活性化します。

4.社会への還元

  社会との連携という地域研究の特徴をいっそう促進するため、JCASでは社会連携部会をおき、下記の3つの活動を柱として活動しています。
(1)災害・紛争への対応
(2)地域研究の成果の社会での活用
(3)地域研究者のライフとキャリア
 2010年度からは、JCASの各加盟組織が行っている社会連携活動を「JCAS社会連携プロジェクト」として登録し、個別の社会連携活動はJCAS社会連携プロジェクトが実施するとともに、社会連携部会はJCAS社会連携プロジェクトどうしの連絡調整および情報発信を担当しています。
 また、加盟組織との共催により、地域研究の社会連携に関する公募による共同研究プロジェクトの実施にも取り組んでいます。

5.活動内容の発信

 地域研究のリゾーム的特質と連携の重要性を踏まえ、JCASのホームページ(ウェブサイト)では、地域研究に関するイベント、出版、公募を体系的に提供するポータルサイトを実現しました。このポータルサイトでは、加盟組織が持つ情報をより効率的に集める工夫を継続的におこなっています。また、ポータルサイトと連動させる形で、地域研究関連情報が掲載されたメールマガジン「JCAS News」を毎週配信しています。すでに多くの研究者や実務者が、このポータルサイトを契機として専門分野を超えた共同研究や社会連携をおこない、地域研究の新たな地平を切り拓いています。
 この他、JCASでは、運営委員会に『地域研究』編集委員会を置き、和文学術雑誌『地域研究』の編集・刊行を行っています。『地域研究』は特集企画と投稿論文から成り、いずれも査読に通った論文が掲載されます。一般書店で販売されており、研究成果を広く社会に発信する役割を担っています。また、JCASニューズレターではJCASや加盟組織による地域研究に関する先駆的な試みを紹介しています。
 地域研究の発展には、多様な専門分野と研究手法の融合と、さまざまな立場にある研究者・実務家・市民の連携が不可欠です。JCASの加盟組織が緩やかに連携することで、これまで想像すらできなかった地域研究の地平が拓かれ、また、市民社会への新たな貢献とインパクトが期待できます。加盟組織の方々には、ぜひ一手間かけていただくことで、JCASを存分に活用していただくとともに、運営に対してご意見やご提案がありましたらぜひお寄せいただきたいと思います。

 JCASでは、日常的な運営を担う幹事組織だけでなく、加盟組織が幅広く参加できるような運営を目指しています。加盟組織の方々には、運営委員会が提案する企画に積極的に応答していただくとともに、運営に対するご意見やご提案がありましたらぜひお聞かせください。

過去の活動方針・活動計画