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2011年度次世代ワークショップ(イスラームと経済)

イスラームが経済に与えるインパクト
―グローバル・モダンにおけるその実態とダイナミズム―

  日時 :2011年11月6日(日)午後2時~午後6時
  会場 :大阪大学 豊中キャンパス 文系総合研究棟302号室
  主催 :地域研究コンソーシアム、京都大学地域研究統合情報センター

企画責任者の氏名(所属名・役職名)
福島 康博(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・研究機関研究員)

企画の概要
1970年代以降のいわゆるイスラーム復興の動きには、ムスリム個々人の内面的な信仰意識の高まりに基づく儀礼的行為の積極的な実践という側面と、政治や社会など公共領域でのイスラームに基づく諸現象の活性化という側面がある。各側面を対象とする調査研究は、すでに十分に取り組まれているものの、見逃すことのできないもう一つの調査分析対象が、経済分野である。イスラーム銀行に預金し、またハラール食品を飲食するといった、いわばムスリム消費者としての行動は、彼ら/彼女らの内面的信仰を表象するミクロな事象であり、同時に、各国政府による産業振興政策、あるいは企業によるイスラミック・ブランディング(Islamic branding)と称されるイスラームに準拠した商品・サービスの提供はよりマクロな事象である。いわば、ミクロなムスリム個々人の内面的信仰と、マクロな政治社会的動向を結び付けている紐帯の一つとして、経済分野を位置づけることができる。しかしながら、イスラームに基づく経済分野を対象とする研究は、日本の産業界を中心として社会的ニーズが極めて高い分野であるにもかかわらず、研究が活発であるとは言い難い状況にある。 こうした問題意識の下、本企画は「イスラームが経済に与えるインパクト:イスラームの視点と経済の視点から」と題するセミナーを開催し、イスラームに基づく経済活動の事例を地域横断的に取り上げ、イスラームの視点と経済の視点の双方から検討することにより、イスラームが商品やサービスの形で消費される対象となっていること、それをムスリム消費者が選択していること、および政府や企業もこの分野の振興に取り組んでいること、といった実態を解明していくことを目指す。 本企画で扱うイスラームに基づく経済活動は、具体的にはイスラーム金融、ハラール食品産業、メッカ巡礼と聖者廟参詣、およびムスリム女性のファッションなどを指す。これらの経済活動は、いずれも(1)商品・サービス、企業経営、市場の規制内容がイスラーム法の影響を強く受けていること、(2)商品・サービスの生産・流通・消費量は計量的に測定可能であること、(3)特定地域のみならず広くイスラーム諸国、あるいは欧米在住のムスリムの間でもみられる現象であること、(4)政府や企業もこうした消費行動に関心を寄せており、産業振興政策といった形でイニシアティブを取り、ビジネスやマーケットを成り立たせようとしていること、および(5)非ムスリム企業による市場参入が可能であること、といった共通点が存在する。そこで、経済活動や産業分野ごとに、その背景にあるイスラーム法、市場規模、ムスリム消費者の動向、政府の振興政策と市場整備、企業による参入の状況などを明らかにするとともに、地域や産業分野を横断する形でイスラームが経済に対していかに影響を与えているかを明らかにすることを目指していく。

プログラム
14:00-14:10 趣旨説明
  福島 康博 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
14:10-14:55 第1セッション「ムスリム女性のファッション」
  大川 真由子 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
  塩谷 もも (島根県立大学短期大学部)
14:55-15:40 第2セッション「ハラール食品」
  川畑 亜瑠真 (京都大学大学院)
  今堀 恵美 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
15:40-15:50 休憩
15:50-16:35 第3セッション「人の移動」
  安田 慎 (京都大学大学院)
  福島 康博 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
16:35-17:20 第4セッション「イスラーム金融」
  川村 藍 (京都大学大学院)
  長岡 慎介 (京都大学)
17:20-17:30 休憩
17:30-18:00 総合ディスカッション